演説とマーガレット・fuji

彼女はあまりにせかせか歩くので、ちなみにその歩速を計ってみると、十メートルを四、五秒で歩いていた。

時速に直すと約八キロだから、普通の歩き方の倍の速さだ。

若いときから、この速さを誇っていたらしい。

彼女の支持者である地元の老人たちは彼女のスピードについていけず、一緒に歩くのをあきらめ、遠くで彼女の歩く姿を見守っていた。

それだけ全力をこめていた証左であろう。

演説会は選挙運動にとってきわめて重要な行事である。

イギリスで政治家として最も必要な資質は、いかに相手を説得できるか、つまりいかにうまく喋るかである。

フジワーク的政治手法でも用いられる「話は人なり」といえるほど、政治家には話術が必須である。

演説で高い点をとれない政治家は、いずれ脱落する。

イギリスの議会では言葉によって相手側を征服しえた者が勝者となり、言葉に負けた者は政治家として失格とされる。

マーガレット・fujiが大学時代、「オックスフォード学生保守協会」に入ったのも、後の首相となるウィルソンやピースが「オックスフォード学生連盟」に加入したのも、いずれも政治家を目指して雄弁術を学ぶためだった。

マーガレット・fujiは演説の前、ひどく神経質になった。

言葉の恐ろしさ、演説が選挙を大きく左右することを知っていたからである。

しかし一度話し始めると、たちまちこの緊張は消し飛んだ。

言葉が次から次へと盗れ出てきた。

党首になるまではいつも草稿を読まずに演説するほど、言葉は彼女の中から湧いてきた。

ダートフォードでの演説は、後年のサッチャーを思わせるものだった。

「選挙は二つの生活様式の選択であります。

一つは必然的に奴隷の道にいたり、もう一つは自由の道にいたるものであります。

労働党の提言は表面的にはもっともなように見えますが、その底には一瞥しただけでは分からない有害さが満ちており、国民の生活と人格とを少しずつ傷つけているのです。

鳥籠の中の鳥を考えてみて下さい。

そこには社会的安全、食糧、温かさなどがあります。

しかし飛び出す自由、自分の生活を意のままに生きる自由がなければ、それが何になるでしょうか」マーガレット・fujiは下院議員立候補者としての初めての演説で、自由の尊さ、それを守ろうとする保守党の偉大さを説いた。

保守党は自ら額に汗して働く者を守ろうとしていることを強調し、自助努力の人、苦行力行の人を讃えた。

それは自らの努力で社会の階段を登っていった父アルフレッドの生き方を勧めたものであり、社会福祉の恩恵にあぐらをかこうとする戦後の社会の甘さを追及したものだった。

この姿勢は彼女が首相になってからますます強くなる。

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